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イチゴ農家でアルバイトしてきた話0.5【脱サラ農業編】

samune

これから農業始めようとする人へ

ハイどーも。管理人のサンマスターです。前回更新から早速書き始めていこうと思います。とはいえ、こんな場末に来る人はおそらく「イチゴ農家 アルバイト」や「農業 始め方」なんかで検索してくると思うので、まずは農業ってきついのか?ってか儲かるの?どんなもんなん?というのから始めようと思う。

多分、他のサイトでは農業なめるな。とか、めちゃくちゃキツイ……。とか結構書かれているけど、正直ここまで強い口調で書かれているのも今なら何となく理解できる。彼らもまた創る人間で、それでお金をもらっている以上、プライドがあるのだ。気軽に始めようとか考えているやつがいたら嫌な顔の一つもする。しかし、何がどうきついのとか曖昧だったからそこらへんなるべく書いていこうと思う。そして大体の作業の流れと経費についても軽く触れていこうと思う。

※ちなみにこれから書くことは、大体伝聞なので正確でなかったり、誇張されてる部分もあると思いますが、よろしくおねがいします。そもそも自営業なのでそこらへん個人差がすごい出ます。なので文末に「らしい」が含まれていることを頭に入れておいてください。

まず、自分は何をしてきたかというと、ハウスの組み立て補助。苗の手入れ。収穫。レッテル張り。箱の組み立て。ハウスの解体。苗の準備(途中まで)。その他もろもろ(休憩小屋の補修や巻き藁の作成補助等)と栽培そのものにかかわることは畝の作成以外は大体やった……はず。

自分が友人知人にこの仕事をしようか相談を持ち掛けられたとするならば、こう答える。「アルバイトならやって損はない。生業にしようと思うなら覚悟を決めておいた方がいい」

よく「農業は体はきついけど、気が楽で自然と戯れてのびのびとできる。鳥や風の音を聴き……」というがとんでもない。それはあくまでも昔からその土地に住み農業をやっている後継ぎにのみ適用される。脱サラで始めた人間についていえば、田舎のネットワークに嫌気がさし、シーズン中は毎日大自然と年末プロレスしているようなもんである。鳥の声や風の音?必死こいて作業してると鳥の声は聞こえないし、風は作業の邪魔と思えてくる。

最初に勤務形態について。前提として365連勤である。出荷時期は当然のこと、それ以外の日は前シーズンの片づけを行い、次シーズンに備え苗を育て、営農計画を市役所に提出する。なんらかの補償金が出るなら煩雑な書類を何枚も書く。そして何日も役所を往復する。その他の作物を育てることもあるかもしれない。イチゴ一本で食べていけなければ建設の仕事に赴かなくてはいけないかもしれない。この1日休みが全くないというのがやってみるとかなりキツイ。バイトであったので70連勤ほどだったけれど結構精神的に参った(休むといっても正月と家庭の事情基本は無休だった)。なんにせよ初めの3年は赤字と思った方がいい。

労働時間は不安定。シーズン開始時は朝の7時から夕方17~18時が基本。いちごのなりがピークに達すると朝6時からイチゴを摘み、昼は苗の手入れをし、夕方から日付が変わるまで出荷のために準備しまた6時に……というサイクルが1月半続く。肉体労働でこれは正直言って死ぬ。オフシーズンだとそれなりに余裕ができ、1日6時間だったりする。また、苗の水やりだけになると1時間未満で1日の仕事が終わることもあり、ちょっとした夏休み期間がある。この夏休み期間は1~2か月ほどあるが、人によってはこの時期は別の仕事を行う。

これだけなら、ただのブラック会社じゃねーか!になるがそこは自営業。イチゴの質を考えなければ、シーズン中の苗の手入れは行わず出荷作業だけすれば良いし、人を雇ってやらせてもいい。また摘むだけ摘んで、パック詰めはセンターにやってもらってもいい。苗についてもお金を払えばほかの農家に作ってもらうこともできる。日曜日は半日だけにしよう。昼は遊んで夜に作業しよう等々。なんにせよ楽して効率よくしようと思えばいくらでもできる。この自分で様々な戦略が取れるのが、農業、ひいては自営業最大の強みである。

この話を聞いて安心した画面の前のそこのあなた。「だったら稼ぎもそこそこにしとくかぁ」と思ったそこのあなた。脱サラして農業を行うのは考え直した方がいいのかもしれない。人一人雇うにしても、確定申告の手間が増える。また楽になるためにはそれなりのお金のかかる。農業のそれなりは何十万単位である。また後で書くが、暖房機のガソリン代だけでも2週間で10~15万程度する場合がある。

そして最大の原因として田舎ネットワークのめんどくささがある。田舎では現代社会で考えられないことがまかり通る場合がある。農業では出荷利益だけがすべてである(どこの世紀末だよ)。利益が上位の人間は同業者から人目置かれ、苗の育成を頼まれたり、知恵を頼りにされることもある。つまりトップ層はお金がより入るようになる。一方育成が下手な人間だとどうなるか。周囲からは馬鹿にされ、困ったことがあっても助けてもらえないことがある。場合によってはそのせいで廃業。なんてこともあり得る。更に田舎者は脱サラしてきたよそ者に厳しい。このような背景から、脱サラしてきた者は常に上手く作物を作らなければいけなくなる。失敗すればここぞとばかりにたたかれるし、変わったことをすれば白い目で見られる。常にトップを走らなければいけないというのも精神的にきついものがある。このようなことに耐えうる、もしくは気にならないメンタルも農業者に必要な素養の一つである。

擁護するわけではないが、一応この田舎ネットワークにも合理性はある。作るのがうまい人間と関わることで、自分の利益があがる。下手な人間と関わったところで一文の得にもならない。そういう考えをただ露骨に体現しているだけなのである。ただ、そういう人もいるというだけで、困っていると助けてくれる人も当然いる。そういう人と関係を持つというのも農業を始めるにあたり大事なことである。

ただ、これらを乗り越えた場合はいままで見たこともない景色が見ることができる。どんな人からも頼りにされ、一定の収入があり、自分の確立した手法が周囲の農家が採用していく。その優越感は途方もないものだろう。

と、以上がバイト君視点から見た1つの農業者の実態である。ここまで見ればもう察しが付ついたと思うが、農業も1つの仕事である。そこに会社員との差は特にない。農家1つ1つが個々の会社であり、戦略を展開し、業績をかけて競争している。これから農業を始めようとしている人は、自分が社長になり、家族がいる場合は社員のために会社を経営していくという自覚を持っていなければならない。

金銭面についてのまた別の枠で書いていこうと思う。それではまた。

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